[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
つや子はいつも口癖のように、
「私には、千手観音様がついているらしいの。私の言う通りにしていると願いが叶うって言われるの。反対に私に意地悪した人は、みんな狂ったり、病気になったりするのよ。とうちゃんなんて、仕事中に何回電話してくる事か。今日の契約は、大丈夫かな?なんてさ。社長なんて威張っているようだけど、全部、私の指示だからね」
と言っているから、章子もつや子には、ほんの微かな反発や疑いも見透かされないよう気をつけていた。
そう言われたと言って、健一に「あなたは、私と結婚した事を感謝しなさいよ。私には、すごい価値があるのだから。つや子に言われたのよ」と言ったところで、今の状況が、何一つ変わる事は無いだろう。かえって、専業主婦の章子が、つや子と遊び歩いている事を指摘されるのが落ちだと思った。
でも、つや子のこの一言で心が動き始めたのは確かな事だった。「何かが出来る!」
今までのつや子からの核心を突くような褒め言葉の一つ一つが、私の意識に積もり満杯になり溢れこぼれてきた気がした。
いつも遊びに行くと早く帰らなくてはと思っていても、必ず帰る頃は辺りが薄暗くなってしまう。そこが、自分の弱さだと章子は分かっていた。つや子の「絶対」と言い切る中に母性を見出し、寄り添っている影を客観的に眺めている章子は強い孤独をはっきり自覚していた。灯りをつけずに居た薄暗いつや子の家を出た。やはり、今日も辺りは薄暗くなっていた。車のエンジンの音で電線に隙間なく止まっていた鳥たちが飛び立った。こんなに沢山の鳥が何処にいたのかというようだが、物凄い数にも関わらず整然と隊を成して近くの森へ帰っていく。ふと、桐生の画廊でみた銅版画は、まるで目の前の景色を抜き取ったかのようだったと思った。 ーつづくー

と思いますが、また挑戦するみたい


