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「宝くじに当たったよりすごい」
 それは、つや子の一言から始まった。
 章子は、つや子の家で昼食をご馳走になって、最高級だというウーロン茶を煎れてもらった。味がしっかりあるが渋みが少なく飲みやすかった。ガラスの急須の中で一つ一つの茶葉が五センチくらいに広がっている。
「この急須探すのに東京のデパート幾つか周って、やっと見つけたの。これでローズヒップを煎れると赤い色が見えてかわいいのよ・・」
 つや子はガラスの急須を持ち上げてうっとりと眺めながら
「ご主人は気が付いてないけど。私は上手に例えられないけど。章子ちゃんを見習ったほうがいいよだって、母にも年中言われるのよ。はい、どうぞ」
 ウーロン茶を足してくれた。
「そんな事無いわよ」
 と口先では謙遜して言った。主人の健一は高学歴とも言えないし、子供の頃から章子ちゃんはしっかりもので頭がいいと言われてきたし、もしかしたら、つや子の言う事もまんざらお世辞でも無いかと思った。ほんの少しの間が、心を見透かされたようで慌てて目を逸らした。いつも、つや子の言う事は、本心か否か分かりにくいことがある。お世辞を言っておいて章子の反応を見ている気がした。

 ある時、章子の学生時代の友人美枝子の事を「章子は、親友か何かに思っているかも知れないけど、あっちは、あんたの事つまらない時の遊び相手としてしか思ってないよ」と言い切った。
 確かに年中連絡を取り合う訳でもない。突然、紅葉の軽井沢へ仲間で行こうと誘って来りして、東京から出掛けて来るのはこの位の年に二、三回が普通と思うが。つや子に言わせると見えている表面的な事で言っているのではないと言うのだ。
 しかし、自分もつまらない時が埋めてもらえるから美枝子と同じだと言った。
「それなら、いいのだけど・・」
 つや子の言葉はそれ以上続かなかった。
そう言う考え方をつや子が持っている事を知った。つや子の中から言葉として出てきたのであって、美枝子ではなくつや子の心を見せられた気がして、対等に思われていない寂しさを味わった。つや子は、自分がつまらない時の暇潰しに章子を誘っている。それ以上に何かに利用しようと思っていて、章子の心をいとも簡単に操ってしまうのだ。それでも、会いたい気持ちになる友人だからと納得していたが、麻薬の様だと思った。 
―つづく―
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